不遜な蜜月
一目見てわかる。
彼女は有能そうには見えないし、容姿も普通より上、という感じ。
でも、彼女は今までのどの女性よりも、理人の近くにいる。
(兄さんに聞いたって教えてくれない。かといって、あの工藤が素直に答えるとも思えないし・・・・・・)
考え込んでいると、視界の端に一臣が映った。
「あ、工藤さん!」
「? なんでしょうか?」
今日も乱れの見えない髪とスーツ。
理人に隠れて目立つことは少ないが、一臣も密かに人気がある。
「社長が呼んでいました」
「そうですか」
玲奈は立ち去ろうとしたが、試しに一臣に聞いてみようと思った。
「香坂さん、よく社長室にいらっしゃいますね」
「・・・・・・」
探るような玲奈の視線に、一臣は一瞬だけ、眉間にシワを寄せた。
「あなたが気にすることではないと思いますが?」
「気になりますわ。社長がわざわざ社長室に呼んでるんですから」
微笑む玲奈に、一臣は内心ため息をつく。