哀しき血脈~紅い菊の伝説3~
俯瞰した光景が美鈴の脳裏で炸裂する。
人通りのない河原で魔鈴が男と争っている。男の手には何か光るものが握られている。
その先では少女が一人、ひざまづいている。
和田美佳だ。
男は彼女を襲おうとしているのだ。それを魔鈴が妨害し、九朗がその様子を伝えてきているのだ。
突然、俯瞰した景色の高度が下がり、男の顔をかすめて再び舞い上がる。
男の顔が美鈴の脳裏に映る。
その男の目は血走っていた。いや、その目は血の色で染まっていた。そしてその男は赤黒い陰の気に包まれていた。
あれは『もの』だ。
美鈴の直感がそう叫んだ。
彼女の体中の血がざわめき始めた。
身体が変わろうとしている…。美鈴はそう感じた。
『私と替われ…』
心の奥底から聞き慣れた声がした。
それは力強く美鈴を心の奥底に引きずり込もうとした。
音が、空気が、美鈴の意識から遠ざかっていく。
『私と替われ!』
声が叫んだ。
その瞬間、美鈴の意識が途絶えた。
髪が次第に赤く変わり逆立っていく。
瞳が赤く輝いていく。
細い身体に熱い血が流れる。
美鈴は『紅い菊』に変わっていった…。
人通りのない河原で魔鈴が男と争っている。男の手には何か光るものが握られている。
その先では少女が一人、ひざまづいている。
和田美佳だ。
男は彼女を襲おうとしているのだ。それを魔鈴が妨害し、九朗がその様子を伝えてきているのだ。
突然、俯瞰した景色の高度が下がり、男の顔をかすめて再び舞い上がる。
男の顔が美鈴の脳裏に映る。
その男の目は血走っていた。いや、その目は血の色で染まっていた。そしてその男は赤黒い陰の気に包まれていた。
あれは『もの』だ。
美鈴の直感がそう叫んだ。
彼女の体中の血がざわめき始めた。
身体が変わろうとしている…。美鈴はそう感じた。
『私と替われ…』
心の奥底から聞き慣れた声がした。
それは力強く美鈴を心の奥底に引きずり込もうとした。
音が、空気が、美鈴の意識から遠ざかっていく。
『私と替われ!』
声が叫んだ。
その瞬間、美鈴の意識が途絶えた。
髪が次第に赤く変わり逆立っていく。
瞳が赤く輝いていく。
細い身体に熱い血が流れる。
美鈴は『紅い菊』に変わっていった…。