悪魔の襲撃ー原発による苦しみー
そして、そんな強い揺れを感じつつ、正面にある家を見ると、いつもは静かに立ちすくんでいる建物が、怒号を上げているかの様にカラダを打ち振るわし、グワングワン動いているのです。

それだけではありません。
周りに植えある桜の木などが自分で意志を持って立ち上がろうとしているかのように、上下左右に激しく揺れているのです。

自分に、一体何が起きたのか、余りに突然の出来事でわからなくなりました。
とにかく、今は動かず、只ひたすら収まるのを独りで待つしかありません。


そして数分経ち、何とか立って歩く事が出来るようになった頃、まだ家の中にこうめがいる事に気付いたのです。
成人になったのに、他のオス猫より小振りで、余り他人に懐かない猫。

皆さんは、たかが動物の為に。と思うかもしれませんが、私達にとったら大切な家族。
こんな、一体何時崩れ落ちるかも解らない建物の中に、取り残して置く事は出来ないのです。

私は、手足が恐怖で震える中、こうめを中から持ち出すことにしました。
築30数年・・・・。
嘗てここまで強い地震に遭遇するとは思っていなかった筈です。
耐震性もどれだけあるか把握すらしていない。
もしかしたら、崩れ落ちる残害の下敷きになるかもしれない。
そんな不安だって、強くありました。
けれど、大切な家族だからこそ、危険だと解っていても、そばに居てやらなければと、思ってしまうのです。


建物を睨みながら、未だに続く激しい余震に
焦る気持ちを抑えて、本当に一瞬、ぴたっと止まる状態になるまで待ちました。
そして、2回目の余震が収まった時がその時でした。


すぐさま茶の間の窓を開け開き、家の中へ。
こうめは、やはり恐ろしかったのでしょう。こたつの中の隅の方で、体を震わし、毛を逆立てて丸くなっていたのです。
私は直ぐさまこうめをかき抱き、頭を優しくなでた後、怖さで何処かへ駆け出してしまわないようにリードの代わりになる紐を探しました。
その間にも、収まっていた地震が再び始まり、
壁に寄りかかりながら、開け開いた窓へ向かいます。そして、靴を軽く履いたのみで、急いで外に駆け出しました。

最初の激しさは無いものの、身体を大きく揺さぶる強さの地震は止まる事なく続きます。
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