悪魔の襲撃ー原発による苦しみー
私は、先ほど留まっていた中庭へ着くと、こうめの首輪にロープを結びつけ、ひも先をしっかり握って地面に降ろします。
すると、しきりに車庫に向かい、隠れる場所を探そうとするこうめ。

けれど、車庫も木を組み立てた脆い所。
安心の出来ない所には、戻る訳にもいきません。

こうめには悪いと思いつつ、中庭に留まり続けました。
その間、考えるのは、仕事へ出かけた父と叔母。そして入れ違いで、隣町の原町へ出かけた祖父。
無事でいるのかと、不安は過ぎります。
でも、声を聞きたくても、携帯電話が繋がらなくなっていて、連絡が着かなかったのです。
独り、皆が戻って来るのを待つしかなかった。


ふと、肌寒くなって来たことに疑問を抱き、空を見上げると・・・・。
はらはらと、小降りの雨が・・・・。
最悪でした。
仕方ないので、こうめを引いて、未だに揺れ動くなか、車庫へ向かい車の中にある傘をとりだして再び中庭へ。
そして、傘を開いてこうめと中腰で座っていました。
と、その時です。

ウー、と車のエンジン音が響き渡って来たのです。

バッと顔を上げて見てみると、見慣れた祖父の車が。また、その後ろには叔母の車が走って来るではありませんか。
それを見た瞬間、
泣きそうになりました。
無事に戻ってきたことに、安堵したのです。


「無事だったん?」

車を中庭へ止めた祖父に、近寄りながらそう訪ねました。
祖父は苦笑しながら頷くと、一番大きな地震があった時、銀行の駐車場に丁度付いた頃だったそうで。
始め車がガッタンガッタン動く事に、車が可笑しくなったのかと思ったらしいです。

そして、外を見た時、側にあった電柱が有り得ないくらい左右にふらついていたことから、漸く地震が起きた事を理解。
車の中にいたほうがいいと判断した祖父は、幾らか落ち着くまでそこに居たそうです。
そして、幾らか収まりが着いた頃、銀行の中には入らず、そのまま引き返して帰ってきたとのこと。
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