待ちぼうけの恋煩い【完】
『…あ、奏也くん!もうすぐ、ごはんの用意できるから、千春の部屋ででも待っててちょうだい?いいわね、千春!ちゃんと奏也くんをもてなしといて!』
玄関で靴をはきかえている私にそれだけ言い残し、さっさとキッチンへと向かっていく母。
『ちょっ…お母さん!?』
人の話なんかきいちゃいない。
私は、母に何を言っても無駄だということがわかると、しぶしぶ奏ちゃんに手招きをした。
『…奏ちゃん…ゴメンね…お母さん言いだしたらきかないから、私の部屋こっちだよ』
それだけ言って階段をのぼる私の後ろから
『…ええの?』
そう言って、ジッと私を見つめる奏ちゃん。
『…う、うん…もちろん』
あまりに真剣な顔の奏ちゃんに内心驚きを隠せなかったが、努めて冷静な声で私は、そう呟いた。