家元の寵愛≪壱≫
朝食を終え、
私は大学があるので隼斗さんを残し、先に離れへと戻った。
隼斗さんはご隠居と茶会の打ち合わせを。
隼斗さんが“家元”となり、
家元だったお義父様は“ご隠居”に。
ご隠居だったお爺様は“大御所”に。
お義父様を“ご隠居”と呼び慣れなくて、
ついつい“家元”と呼んでしまう。
家元は隼斗さんなのに…。
だから、最近は間違わないように“お義父様”と呼んでいる。
お義父様もご隠居と呼ばれるより良いみたい。
大学へ行く準備を済ませた頃、隼斗さんが姿を現した。
「ゆの、待ってろ。すぐ着替えるから」
「大丈夫ですから。1人で行けます」
「そう言う問題じゃない」
「だけど……地下鉄で3駅ですし…」
「いいから、待ってろ!!……な?」
「………はい」
隼斗さんの好意を無下に出来ず、
今日もまた……渋々承諾。