家元の寵愛≪壱≫
―――――そうなんです。
毎日“稽古場(柳幻荘)へ行くついでだ”と、
私を大学まで送ってくれている。
藤堂家は駅から徒歩数分の距離。
そして、私の通う大学もまた駅から数分の距離。
歩く距離なんて大した事ない。
春の茶会が目前に控え毎日大変なのに、
わざわざ送って貰うのは申し訳ない。
藤堂家を出発して大学へ。
それに、相変わらず人目を惹くド派手な車で、
大学の正門前に到着すると、
毎日、呪文のように同じセリフを…。
「今日は何時に終わる?」
「……」
はぁ…ホント、隼斗さんって…
過保護というか溺愛し過ぎるというか…。
私は聞こえなかったフリをして車を降りようとすると、
「そういうイジワルすると拉致るぞ?」
「はっ!?」
「フフッ……冗談。で、何時だ?」
「………15時30分です」
「了解。じゃあ、その時間にここでな?」