家元の寵愛≪壱≫
程なくして、大きな箱を抱えた彼が。
「分からなかったから適当に買って来た」
隼斗さんは後部座席にケーキの箱を置いて
「じゃあ、ドライバーさん。藤堂家までお願いします。くれぐれも安全運転で…」
「……はい」
隼斗さんが優しく頭を撫でてくれる。
緊張していた身体が彼の手で
ふっと力が抜けて行くのを感じ、
隼斗さんの手って魔法の手みたいだな。
「ん?……どうした?」
「ううん、何でも無いです」
私はニコッと微笑んで自宅へと車を走らせた。
自宅の駐車場、隼斗さんの車の隣りに停めた。
すると―――――、
「ゆの、お疲れ」
「いえ、隼斗さんこそお疲れ様でした」
「ん?」
「私の運転で疲れたでしょ?」
「んー、ホント言うとちょっとな。けど、思ってた以上に上手くて安心した」
柔らかい表情の彼を見て、少し安堵した。
良かったぁ……減滅されなくて。