家元の寵愛≪壱≫
車を降りようとドアに手を掛けると、
「ゆの」
「え?」
急に左腕を掴まれ、振り返る。
黙ったまま見つめる隼斗さんと視線が絡み
「どうかしましたか?」
「家に入ったら2人きりになれない」
「えっ?」
「少しだけ…」
「えっッん////////」
強引に引き寄せられた腕。
隼斗さんの車と違って…
私の車は席と席が凄く近い。
いとも簡単に唇は重なり、
腕を掴んていた手は頭を支え、
もう片方の手で私の右手を握りしめた。
重なる唇の隙間から
彼の吐息と私の吐息が……。
「……は……ゃと…さ…ん……」
「…………まだ……」
彼の愛情を取り零さないように、
私は彼のシャツを更に強く掴んだ。
甘い……甘い……
蕩けるようなキスに溺れながら。