家元の寵愛≪壱≫
軽快に走り去る車を眺めて深いため息。
はぁぁぁ~~~。
「何、朝から深いため息ついてんの?」
後ろから聞き慣れた声が。
「玲、おはよ」
「うん、おはよ。ホント、相変わらず凄いね?」
「………うん」
玲と共に校舎へと歩き出す。
玲は同じ大学のスポーツ栄養学部。
医療、栄養、心理などを修得する学部。
勿論、“皇くん”の為だと思う。
今年高校3年の皇くんは、
既に大学や実業団から声がかかっているらしい。
そんな彼を影から支えたいと言う。
ホント、2人とも凄い。
ちゃんと将来を見据えて進路を決めるなんて。
私なんて…
1にお金、2にお金、3にお金…
結局、やりたい事云々でなく
入学金や授業料で決めちゃったし…。
それに結婚した今、
本当にこのままでいいのか…?
最近、本気で考えるようになって来た。