家元の寵愛≪壱≫


軽快に走り去る車を眺めて深いため息。

はぁぁぁ~~~。



「何、朝から深いため息ついてんの?」


後ろから聞き慣れた声が。


「玲、おはよ」

「うん、おはよ。ホント、相変わらず凄いね?」

「………うん」


玲と共に校舎へと歩き出す。


玲は同じ大学のスポーツ栄養学部。

医療、栄養、心理などを修得する学部。

勿論、“皇くん”の為だと思う。


今年高校3年の皇くんは、

既に大学や実業団から声がかかっているらしい。

そんな彼を影から支えたいと言う。

ホント、2人とも凄い。

ちゃんと将来を見据えて進路を決めるなんて。


私なんて…

1にお金、2にお金、3にお金…

結局、やりたい事云々でなく

入学金や授業料で決めちゃったし…。


それに結婚した今、

本当にこのままでいいのか…?



最近、本気で考えるようになって来た。


< 12 / 450 >

この作品をシェア

pagetop