家元の寵愛≪壱≫
九 学祭の罠
10月下旬、日曜日の朝。
「では、行って来ますね?」
「ん、気をつけてな」
「はい」
「ん」
「はい?」
「ん」
「……////////」
離れの玄関先で今、私たちは…。
昨日、今日と行われている大学の学祭に向かう為、
出掛けようとしているんだけれど…。
隼斗さんは腕を組んで、何故か目を瞑っている。
これって……私にキスしろって事だよね?
もう、隼斗さんったら////
私は少し背伸びをして、
隼斗さんの頬に軽くキスをすると
「ッん?!!」
グイッと腰を抱き寄せられ…
隼斗さんの頬から唇が……離せない。
すると―――――、
フッと抱き寄せる腕の力が緩まって
彼の身体が少しずつ離れて行く…。
私は何とも言えない名残惜しさを感じて
咄嗟に彼の右手を掴んでしまった。