家元の寵愛≪壱≫
九 学祭の罠


10月下旬、日曜日の朝。



「では、行って来ますね?」

「ん、気をつけてな」

「はい」

「ん」

「はい?」

「ん」

「……////////」



離れの玄関先で今、私たちは…。


昨日、今日と行われている大学の学祭に向かう為、

出掛けようとしているんだけれど…。

隼斗さんは腕を組んで、何故か目を瞑っている。


これって……私にキスしろって事だよね?

もう、隼斗さんったら////


私は少し背伸びをして、

隼斗さんの頬に軽くキスをすると



「ッん?!!」



グイッと腰を抱き寄せられ…

隼斗さんの頬から唇が……離せない。



すると―――――、


フッと抱き寄せる腕の力が緩まって

彼の身体が少しずつ離れて行く…。


私は何とも言えない名残惜しさを感じて

咄嗟に彼の右手を掴んでしまった。


< 127 / 450 >

この作品をシェア

pagetop