家元の寵愛≪壱≫
「ん?」
隼斗さんは少し驚いた様子で
「どうした?」
「………」
淋しいだなんて口が裂けても言えないよ。
大学へ行くだけなのに……。
彼の温もりから離れ難くて
彼の手を離せずにいた――――。
すると、
「ゆの?」
優しい彼の声が降ってくる。
離れの玄関は20㎝ほどの段差があり、
私は土間部分から彼を見上げていた。
「隼斗さん////」
私は彼の瞳をじっと見つめて…。
気付いて……私の気持ちを……。
すると、隼斗さんは土間へ下り立ち、
ふわっと優しく抱きしめてくれた。
やっぱり、この腕の中は落ち着く…。
何とも言えないほどの心地良さに
時間も忘れて……浸っていると、