家元の寵愛≪壱≫


「ん、軽くでいいから」


目を閉じたまま、私からのキスを待つ彼。

そんな風に待たれても……。

ドキドキしすぎてどうしていいのか…。

今にも口から心臓が飛び出しそう。


「む、無理です」

「………」


身動き1つせず、

私からのキスを待っている。


最近、ますます意地悪になって来た。

はぁぁ~~もう、ホントに……。


私は小さく息を吐いて――――

ゆっくり、彼の顔に近づき始めた。


今までに無いくらいドキドキして、

身体が勝手に震え始めた。



そして―――――

ほんの僅かに唇の端に触れるだけのキスを。

私は真っ赤な顔で彼から離れると、


「それだけ?」

「へ?」


思わず、彼を見下ろすと不敵に微笑む彼が。


「いいいい、今、しましたよ?」

「ん……もっと」

「えっ?!!////」

「そうやって困る顔もそそるねぇ」

「なっ!!////」


私が目を見開くと、


< 175 / 450 >

この作品をシェア

pagetop