家元の寵愛≪壱≫
「逃がすワケねぇだろ」
「なっ…ッん////////」
容赦なく、奪われる私の唇。
私は必死に意識を繋ぎ止め、
やっとの思いで彼から離れると、
「ちょっ……と……は…や…とさん////」
「ん?…何だよ」
息も絶え絶え、言葉を紡ぐ。
彼は少し不満の表情を。
だけど、畳の上で……
しかもこんなはしたない格好で。
恥かしいにも程がある。
回転の鈍い頭で必死に話題を変えようと、
「そ、そう言えば、大学の話は?」
「好きにしていいよ」
「ホントに?転部試験、受けていいの?」
「あぁ、いいよ…好きにして。俺も好きにするから」
「えっ?ッん/////」
毎度毎度、少し強引な彼のキス。
けれど、触れてしまえば
それさえも忘れてしまう。
だって、触れる唇のその先は
私を知らない世界へ誘う甘美な誘惑。
彼を愛してしまった以上、
もう、この誘惑からは
逃れる術は無いのかもしれない。