家元の寵愛≪壱≫
弐 修練のその先に…
ゆのが俺の妻となり、1カ月ちょっと。
先週、晴れて大学へ入学したゆの。
入学式当日、稽古場へ向かう途中に
大学の正門前でゆのを降ろした。
グレーの真新しいスーツを身に纏い
髪をふんわり軽く結い上げ、
今どきの女子大生には控えめな…
素肌に近いほんのり化粧。
母さんから貰ったと言う、
睡蓮の香りの香水を付けて
俺の車から軽い足取りで門をくぐった。
ミラー越しにゆのの姿を追っていると、
甘いお菓子に群がるアリのような、
……いや、違うな。
ハイエナが獲物に目の色変えて
我先に飛びかかっているかのように。
思わず、ハンドルを握る手に力が入いる。
何で女子大じゃねぇんだよ!!
………ファ―――――ンッ!!
怒りのあまり、無意識にクラクションを…。
その日から、大学への送迎は…
当然、俺の日課の1つとなった。