家元の寵愛≪壱≫
俺とゆのにとって、この時期は
祝い事が重なる特別なひととき。
親父の車に乗り込んで、
「ゆの、忘れ物ないよな?」
「はい、多分大丈夫だと思います」
「ん、じゃあ出発するぞ」
「はい、安全運転でお願いします」
俺は自宅駐車場を後にした。
これから2泊3日で向かう場所は
都心から車で約2時間20分のスキー場。
さすがに俺の愛車(イタリア車)では
雪道はかなり無理があるので、
親父の4WD車を拝借した。
日中、俺が仕事をしている間に
予め用意しておいた荷物を積み込み
ゆのが出掛ける万全の準備をしてくれた。
18時前に無事、高速道路に。
「ふぅ~何とか間に合ったな」
「はい……隼斗さん、気が焦るのは分かりますが、安全運転ですからね?」
「分かってるって。大事な姫を乗せてヤバい事は出来ねぇよ」
「もう////」
軽快に車を走らせ、目的地目指して。