家元の寵愛≪壱≫
十三 その背中には…
1月1日23時40分、
自宅、離れの寝室にて―――。
「ゆの……もう、寝たか?」
ベッドの中、隼斗さんの腕に抱きしめられて…。
「いえ、まだ起きてます」
彼の胸に顔を埋めたまま呟いた。
パジャマの布越しに伝わる彼の鼓動。
ドックン…ドックンと、普通でない事が窺える。
除脈とまでは言わないが、かなりゆっくりな脈拍で。
恐らく、今、動悸に似た感覚なんじゃないかしら?
私は心配になり、そっと顔を上げて
「大丈夫ですか?」
彼の顔を覗きながら声を掛けた。
「フッ……情けねぇな」
「………え?」
「家元になって10カ月が経とうとしてるのに、未だに緊張する」
抱きしめられる腕がギュッと強くなるところを見ると、
隼斗さんは相当緊張している様子。
妻として、私に出来る事はあるだろうか?
彼の鼓動を感じながら、
必死に何かを探し求めて……。