家元の寵愛≪壱≫
明日(1月2日)は隼斗さんにとって
『家元』となって初めての初釜。
緊張して当然なのかもしれない。
香心流の初釜は、
他の流派が1月半ばにするのに対して、
新年早々にする為、
ゆっくりお正月気分を味わう事も出来ない。
元々、1月半ばに開かれる、
華道『桐島流』の“初生け式”と重ならないようにしている為。
多くの伝統芸能の仕事初めが重なる1月。
それは茶道界も同じ事。
その昔、香心流家元の娘が桐島流に嫁いだ事により、深い結び付きがある。
その頃から、香心流の初釜は新年初めになったとお義母様から教わった。
だから今年も、香心流の初釜は1月2日。
桐島流の初生け式は1月15日と決定している。
隼斗さんは『家元』という立場で、
否が応でもそれを全うする責務がある。
何度も深呼吸する彼の背中を
ゆっくり、何度も、擦りながら……。