家元の寵愛≪壱≫
それから数日――――。
夕食を終え、いつものように奥座敷の茶室で
「隼斗、最近…ゆのさんと喧嘩でもしたのか?」
「ん?何で?」
「いや、最近のお前の様子が少し気になってな」
「茶が変ってこと?」
「ん~、まぁ大したことでは無いが、甘みが少ない」
「………」
「喧嘩でもしたのかと思ったんだが…」
さすが親父、俺の心中をよく把握している。
出来る限り精神を集中させ、
お茶を点てたつもりだったが…。
「で、何が原因なんだ?」
「………」
何が原因って……そりゃアレに決まってる。
だけど、こればかりは親父に言っても…なぁ…。
俺は苦笑しながら、
親父が点てた茶に口をつけた。
すると―――――、
「もしかして、夜の方が上手くいってないのか?」
「ブッオッ…ッ…ッゴホッ……」
飲み込みかけた茶を噴き出した。