家元の寵愛≪壱≫


小部屋の入口脇に箱を並べ、

お義母様と共にその場を後にした。



端から順に部屋を覘いて

お弟子さんに声を掛けるお義母様。

私もその姿を見習って会釈を。


すると、廊下の奥から静乃さんが。


「奥様」

「ん?どうかした?」

「これが…」

「ん?」


静乃さんから何やら、物を受取ったお義母様。

私はその手元をそっと覗いて…。


「あっ!!」

「ん?」


お義母様が手にしたのは隼斗さんの懐紙入れ。

私が彼へプレゼントしたもの。

仕事の時はいつも肌身離さず持ってるハズが。

きっと緊張しすぎて、

どこかに置き忘れたのかしら?



すると、


「あっ、そうだ!!いい事考えた~♪」

「へ?」


お義母様は何やら楽しそうに。

隼斗さんの懐紙入れをヒラヒラとさせた。



そして……――……。


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