家元の寵愛≪壱≫


黒茶色の着物を着た彼の背中をじっと見つめていると、

その背中に重責がのしかかっているのが分かる。

24歳という若さで沢山の人の上に立ち、

日々、お茶を点てるだけでも大変なのに

今日は、ご隠居や大御所様のご友人方に振る舞うのだから。


彼の背中を見つめ、

胸がキュッと締め付けられた。


『隼斗さん…隼斗さん……隼斗さん…』

心の中で何度も彼の名を呼んでいたら、



「んッ?!!」

「……ふぇっ??」


頬に柔らかい絹の肌触りと

彼の温かい体温が伝わり、

驚いた彼の声と、

ビクッと身体を震わせた衝撃に

思わず、ハッとした。


キャアァ〜〜〜!!

何してんの?! 私!!

彼の心に寄り添いたくて、

気がついたら……

本当に彼の背中に寄り添っていた。


集中していた彼は、

私が入って来た事も分からなかったみたいで

当然の如く、驚いている。


私は我に返り、


「ごめんなさい!!」


慌てて彼から離れようとすると、



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