家元の寵愛≪壱≫


長い腕に手繰り寄せられ、彼の胸元へ。


「誰かに見られますよ?」

「ここには誰も来ないよ」

「でも、お義父様が…」

「親父がゆのをここに来させたんだろ?」

「あっ…」

「なら、誰も入って来ないよ…安心しろ」

「ッ////」



『安心しろ』だなんて言われて、

出来るわけがないじゃない。


ここは茶室で、今日は初釜。

のんびりまったりするには不適切な場所で…。


「ゆの、今、ここじゃ…とか考えてんだろ」

「なっ!!////そ、そんな事、考えてませんよ!!」


あ〜ぁ、ダメ!!

恋愛経験値がゼロに等しい私の思考なんて

きっと、隼斗さんには全てお見通しなんだわ。

……悔しいけど。


「ったく!!俺をどうしたいんだ?」

「へ?」

「煽るのはやめろ」

「煽ってなんか「煽ってんだろ」

「ッ!!////」


彼の腕の中で上目遣いの私は

彼の袂を掴んでじっと見つめていた。


これが……煽る?



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