家元の寵愛≪壱≫


煽るの意味もイマイチ分からないけど、

彼の緊張が無くなって、

いつもの彼でいられるなら……

私が『煽る』事にも意味があるのかもしれない。


私は小さく息を吐き、勇気を振り絞って

大胆にも背伸びをした。

そして、ゆっくりと瞼を閉じた。

すると、


「フッ、ったく!仕事場だってのに…」


彼は小さくそう呟いて、優しく唇を重ねた。


ほんの少し冷んやりする彼の唇。

軽く啄ばまれる唇の隙間から

甘い吐息が漏れ出して……。


後ろ首と腰を支えられ、

私は甘いキスに溺れ始めた。


濃厚なキスは、蝋梅の香りが漂う茶室の中で。


微かに聞こえるお弟子さん達の声。

けれど、その声さえもどんどん遠のいてゆく。


意識が薄れ、腰が砕ける、その瞬間!!


「ゆの」


意識が朦朧とする中、

愛おしい人の甘美な声が耳元で……。


ゆっくりと瞼を開けると、

満足そうな表情をさせた彼が。

ッ!!////

反則です……隼斗さん。

そんな顔されたら『もっと』って、

言いたくなっちゃうじゃないですか。


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