家元の寵愛≪壱≫
隼斗さんはとても優しい表情で
襟元に手を添えている。
――――私の存在が、彼の支えに……。
「ん?」
「………はぃ」
私が小さく頷くと、彼はニコッと。
彼の胸元へゆっくり近づいて
緊張を掻き消すかのように
フゥ~~っと息を吐く。
そして……―――……
チュ~~ゥ~~~ッ
思い切り吸いついた。
やっとの想いで彼から離れると
「上~出来♪」
満足げな彼が優しく頭を撫でる。
優雅な所作で着崩れを直す隼斗さん。
その彼の胸元、鎖骨の少し下辺りに
艶めいた深紅の薔薇が。
自分でしておいて恥ずかしくなる。
そんな表情を悟られまいと俯くと、
「んじゃあ、そろそろ、隼斗でなく『香雲』になるとしますか」
―――――――パンッ!!
彼は腰骨辺りを叩くように気合いを入れた。
そんな彼を見上げると、
すでに『香心流家元・香雲』に。