家元の寵愛≪壱≫
既に『ゆの欠乏症』が発病し、
禁断症状が出始めている。
俺はゆのの残り香を求めて、
………ベッドへダイブした。
彼女の枕に顔を埋めて。
癒されるなぁ。
変態男と化した俺は、
彼女のぬくもりを妄想しながら余韻に浸る。
ふと、寝返りをした拍子に目に入った黒い物体。
微動だにしていないのに、存在感が。
何故、俺を呼ぶ?
いや、実際、呼ばれている訳ではないが
俺の心が無性に騒ぎ出すんだ。
『何か、手がかりを…』と。
イケナイと分かりつつも、
俺は引き寄せられるようにそれを手にした。
別に浮気を疑っている訳でなければ、
交友関係を束縛したい訳でも無い。
ただ、この違和感を拭う何かがあれば……。
静まり返る室内に緊張が走る。
俺は通話履歴を1つ1つチェックし、安堵する。
俺の知らない名前は無いな。
ホッとしたのもつかの間、
メール履歴を開いた、次の瞬間!!