家元の寵愛≪壱≫
「それと、ゆのさんの稽古だが…母さんによると、もうほぼ完璧だそうだ。元々頭の良い子だし、基本は出来てる。茶会の2~3日前まで暫く休ませるように話そう」
「えっ!?それ……マジで!?」
「あぁ。だから、後はお前次第」
「よし!!俺、頑張る!!」
って、親父の前で何を宣言してるのやら…。
まぁ、それはそうと…
気を引き締めて、明日から死ぬ気で頑張るぞ!!
翌日の朝―――――。
大学へ送り届ける車内で…
「ゆの」
「はい?」
「今日から暫く…俺、別の所で寝るから」
「えっ?どうかしたんですか?」
「ん?いや…茶会が近いから稽古に集中する」
「……そうですか。で、どこに?」
「母屋と稽古場で寝泊まりする」
「だ、大丈夫なんですか?お身体…無理しないで下さいね?」
ゆのは心配そうに俺の顔を覗き込む。
「平気だよ。家元が仕事を放棄出来ないだろ?」
心配するゆのに微笑んでみせる。