家元の寵愛≪壱≫
十五 空白の時間と彷徨う視線


―――――――2月下旬



無事、転部試験に合格し

正式に入学手続きも終えた……私。


漸く、精神的にも楽になった。


私の我が儘で転部したいと言っておきながら

不合格になんてなったら洒落にならないからね。



19歳という未成年の私にとって、

法律上では婚姻すると成人と見做されるみたいだけど

大学の書類上ではやはり未成年扱い。

………そりゃあ、そうだよね。

自分の稼ぎで生計を立ててる訳じゃ無いもの。


書類には『保護者氏名欄』というのがあり、

そこには、当然の事ながら隼斗さんの名前が。


実父が存在しても、

私は既に『園宮』の籍から除籍している。


今はもう、『藤堂』の人間なのだと改めて実感した。


自動車免許を取得するにあたり、

教習所に申し込んだのはさゆりさん。

父親に頼んだけれど、

実際はさゆりさんが全てしてくれたらしい。


だから、あぁして、

実際に書類に記載されている彼の名前を

自分の目で確認すると、嫌でも実感が湧いてくる。


――――――――『彼の妻』なのだと。



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