家元の寵愛≪壱≫
毎日毎日、この状況……。
見る度、ドキッとしてしまう。
男の人のこういう艶めかしい姿を見た事が無くて、
初めて見た朝は、悲鳴を上げてしまった。
当然の如く、隼斗さんを起こしてしまい
私は恥ずかしさと申し訳なさで、
泣く事しか出来なかった。
あれから3週間。
慣れて来たとはいえ、
毎回ドキッとしてしまうのは変わらない。
だって、だって本当にカッコ良すぎるんだもん。
そぉ―――っと布団を掛け、小さな声で…
「もう少しだけ…良い夢を…」
私は静かにベッドから出て、身支度する。
隼斗さんが家元となった翌日から、
私もまた、家元夫人として果たすべき事が出来た。
数ある家元夫人の仕事のうち、
まずは“家元への御膳を出す事”
妻として当たり前の事なのだが、私にとっては一大事。
包丁を握る事すら危うい私が、
隼斗さんに御膳を出すだなんて…。
と言っても、御膳のほとんどを使用人さんが準備してくれる。
それは本当に有難くて……。