家元の寵愛≪壱≫
生まれて初めて自分から誘惑した。
ベタな発想からもしれないけれど、
プレゼントは私自身でご勘弁を……。
2週間後には隼斗さんの誕生日がある。
その時に今日の分もきちんとお返ししよう。
そう心の奥で呟いていた。
抱き寄せる腕がはらりと解け、
ゆっくりと顔に影が降ってくる。
衣擦れの音と彼の吐息が段々と近づき、
私は彼の腕をギュッと掴んで瞼を閉じた。
そっと触れるだけの口づけは、
熱い吐息を零しながら
深く魅惑的なものへと変化して行く。
後ろ首を支えていた手がゆっくりと肩先へと移動し、
その手は徐々に高鳴る鼓動のもとへとつたって行く。
これ以上無いくらいに近い距離にいるのに
何故か、心が満たされない。
彼からのキスを受け止めても……。
心の奥で鳴り響く警笛が、涙となって溢れ出した。
「……もっと………もっと……触れて……」
「ッ?!そんなに煽んなって」
「………お願い………もっと……もっ……と……」
声にならない声で彼の存在を求めた。
キスだけじゃ足りなくて……―――……。