家元の寵愛≪壱≫


「彼女は『18』という若さでこの家に嫁いだ。年齢で考えれば、ありえない事では無い。だがな、隼斗。うちは『茶道家』だ。しきたりを重んじるこの家で、彼女は幼いながらも一生懸命にお前を支えて来た筈だ」

「そんな事、言われなくたって解ってる」

「甘えられる親がすぐ傍に居ないんだぞ?」

「解ってるよ………それくらい」

「……どうだかな」



親父が言う事はもっともだ。


ゆのの父親は車で2時間程の距離にいる為、

頻繁に逢いに行ける距離に居ない。



「心細い生活の中で、お前だけが唯一心の拠り所じゃないのか?」

「………」

「そろそろ話したらどうだ?」

「………」

「お前の気持ちも解らなくはないが、彼女の気持ちを蔑にし過ぎたらどうなるかくらいお前だって解るだろ」



親父はため息を零しながら茶器の手入れを始めた。


「今日は点てなくていい。茶器でも磨いてろ」


そう言って、茶器を差し出した。

俺はそれを無言で受取り、呆然としていた。



暫くすると、


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