家元の寵愛≪壱≫
「ゆのちゃん、この袋持って隼斗の車で待ってて貰える?」
「え?……あっ、はい」
何が何だか分からないが、とりあえず助手席へと。
車内は爽やかな香水の香りが漂って…。
隼斗さんが普段聴いてる音楽が流れていた。
へぇ~隼斗さんってこういう音楽を聴くのね。
大学の送迎の際はいつも切られているオーディオ。
隼斗さんの知らない一面を知る事が出来て、思わず顔が綻んだ。
目を瞑って聴き入っていると…
「お待たせ」
運転席のドアが開くと同時に愛しい人の姿が。
「お仕事お疲れ様でした」
私は笑顔で迎えた。
「ゆの、シートベルト!!」
「え?…あっ、はい」
隼斗さんが少し強い口調で…。
車内に緊迫した空気が漂う。
私、何か変なこと言ったかしら?
軽快に走行する車内は音楽が流れるだけ。
首都高速に入ったと同時に…