家元の寵愛≪壱≫
さゆりさんの車でとあるサロンへとやって来た。
「ここはね、去年、私が担当したお店でね、誰でもシンデレラになれる場所なの」
「え?」
「ヘアにネイル、フェイスやボディに至るまでありとあらゆる『美』が手に入るお店」
「すっ、凄いですね!!」
「って言っても、私も数回しかした事ないんだけどね」
クスッと笑うさゆりさんは大人の雰囲気ではなく、
どちらかと言ったら可愛らしい人だ。
「来年ここの2号店がオープンするのもあって、最近打ち合わせでよく来るんだけど、そしたらね、いつでもタダで綺麗にしてくれるって言うから」
ウフフッと微笑む彼女は本当に愛らしくて、
私なんかより遥かに魅力的な女性に見える。
もうすぐ、50歳になるというのに。
「基樹さん、今日は帰りが遅いみたいだから、2人でトコトン綺麗になって帰りましょう♪」
「はいッ!!」
「基樹さんが見惚れるくらい綺麗にならなくっちゃ!!」
父親は、新規のお客様との打ち合わせで休日出勤している。
『基樹さん』は私の父親。
さゆりさんは、あんな中年オヤジのどこが良いのだろう?
瞳を輝かせて、店長と思われる人と話をしている。
「ゆのちゃん、OKだって!!行きましょう♪」
「はい」