家元の寵愛≪壱≫
まるで本当の母娘のように並んでエステを受けている。
「やっぱり、若いっていいわねぇ」
「えっ、そんな事ないですよ。さゆりさんって、色白ですよねぇ」
「そりゃあねぇ。いつも事務所で図面と睨めっこしてるもの」
「あっ、でも、お父さんは結構色黒ですよ?」
「あぁ、それはね?基樹さんは、外構の設計とか公共施設のような大規模の設計を担当してるから、外出が多いもの」
「じゃあ、さゆりさんは?」
「私はリノベーションや個人住宅専門だから、日中に屋外で打ち合わせ……なんて事はないからね」
「へぇ~、設計士でも色々あるんですねぇ」
その後も色々な話をした。
亡くなったご主人との馴初めや病気の事、
父親との生活の事とか……沢山話をしてくれた。
私も『藤堂家』の事や大学の事、
隼斗さんとの新婚生活の事まで……。
すると、つい思い出してしまって涙が溢れて来た。
「大丈夫よ」
震え出す肩を擦りながら、寄り添ってくれるさゆりさん。
私は我慢していた感情が一気に溢れ出した。
………堰を切ったように―――――。