家元の寵愛≪壱≫
我慢していた涙を全て流したら、意外にもスッキリした。
『迎えに行く』……彼はそう言った。
私はそれを信じて待つしかない。
そうとなれば、さゆりさんの言うように
トコトン綺麗になって、次に逢った時に驚かせるんだから!!
「さゆりさん、次は何ですか?」
「えっ?……フフッ、そうこなくっちゃ!!」
私の表情から察して、さゆりさんの瞳にも熱がこもる。
「次はネイルよ!!」
「了解です!!」
私達は女子力向上を図る為、次から次へとチャレンジした。
自宅に戻り、さゆりさんはキッチンで夕食の準備を始めた。
「あの、さゆりさん」
「ん?」
「私に……料理を教えて貰えないですか?」
「えっ?」
「私、破壊兵器並みの料理しか出来なくて……」
「………そうなの?前に基樹さんから聞いてはいたけど……」
「藤堂の家で毎日教わって、最近少しずつ出来るようになって来たけど、それでも自信が無いんです」
「隼斗君に出すのが?」
「………はい」
「それならこの際、料理もスキルアップと行きますか?!」
「はい!!是非、お願いします!!」
「私はスパルタよ~?」
「ついて行きます!!さゆり師匠!!」
こうして、私はさゆりさんに料理を教わる事にした。