家元の寵愛≪壱≫


「ゆの、着いたぞ?」

「………ん?」


車の外は真っ暗で、一軒の家以外何も見えない。

隼斗さんの後を追って建物の中へ。



「ゆの、風呂は?」

「へ?……あっ、入って来ました」

「んじゃあ、適当に座ってて。俺、2階を温めて来るから」


そう言い残した隼斗さんは2階へと。


私は辺りをキョロキョロ。

もしかして……ここ別荘?

テレビに出て来そうな豪華な造りにあんぐりしていると、

2階から戻って来た隼斗さんが


「何か飲むか?」

「え?……ん~いいです」

「そうか?」


隼斗さんは降ろした荷物を開け始め、


「ん、何も飲まないなら歯磨きしとけ」


手渡されたのは歯ブラシセット。

もう、何が何だか分からない。


「あの……?」

「ん?」

「もしかして、ここに泊まるんですか?」

「うん、そうだけど」

「ッ!?」


えっえぇぇぇぇっ!?

もしかしてとは思ったけど、やっぱりそうなんだ。

急に騒ぎ出す鼓動を静めようと試みるが……無理みたい。

どどどどど、どっ、どうしよう。


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