家元の寵愛≪壱≫


パッと見、今までの私と差ほど変わらない。

でも、何かが違って見える。


多分、心の中が変ったからそう見えるのだろう。



私は『園宮ゆの』じゃない。

今はもう『藤堂ゆの』なんだから。


昔の私は捨て去って、

これからは今の私が自然体でいられるように。






肌の手入れをきちんとこなし、

教わった料理をおさらいして、

彼が迎えに来るのを待ち侘びていた。







―――――――17日、9時30分


隼斗さんが来るのを玄関先で待っている。

ここは田舎だから、彼の車はすぐに分かるだろう。

………爆音だしね。


だけど、本当に来てくれるのか、未だに不安。

もしかして、迎えに来るという口実で

『離婚届』を突き付けられないか………そんな不安に駆られていた。


焦る気持ちと期待に満ちた感情と

何が起こるか分からない不安と。


身体中から異様な汗が吹き出し、足が震えていた。


すると、


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