家元の寵愛≪壱≫
「ゆの?洗面所は廊下の奥から2番目な?」
「………は…ぃ…」
もう、返事する気力も消え失せる。
震え出す足で何とか歯磨きをして戻った。
隼斗さんの座るソファの脇で立ち止まると、
「ゆの、おいで」
グイッと腕を引き寄せられた。
「ちょっ……隼斗さんっ!?」
無理やり座らされたのは彼の膝の上。
「緊張してんのか?」
「ふぇっ?」
緊張のあまり、まの抜けた声が…。
「ここへ来た意味分かるか?」
「……!?」
「フッ…漸く分かったみたいだな」
妖艶な笑みを向けられ、一段と心臓が騒ぎ出した。
「えっと……あの……その…」
真面な言葉が出て来ない。
ダメ……緊張しすぎて何も考えられない。
じりじりと美顔が迫って来て
私は耐えられずギュッと目を閉じた。
すると――――、