家元の寵愛≪壱≫
「ゆの、ちょっと掴まってろ?」
「へ?キャッ!!」
隼斗さんは急に立ち上がり、歩き出した。
……私を抱えたまま。
着いた先は寝室と思われる2階の部屋。
温められた部屋のベッドの上にふわりと下ろされた。
柔らかなベッドの上で異常なほど硬直する身体。
緊張のあまり、身体が勝手に震え出す。
そんな私を……
「ゆの……」
隼斗さんはふんわりと優しく包み込んだ。
優しい温かなぬくもりの中で
少しずつ肩の力が抜けて行く。
お義母様が用意して下さったこの服も
見違えるほどに素敵な女性に変身させて貰えたのも
忙しいこの時期に仕事場から離れさせてしまったのも
それもこれも全ては……この時の為?
そして、それはきっと……。
「ゆの?」
「………はい」
熱を帯びた視線を向けられ
彼の瞳に吸い込まれるように見つめ返す。
分かっている……理解している。
こういう日がいつか来る事くらい。