家元の寵愛≪壱≫
私に課せられた物は汁物。
出汁を取るところから器選びまで。
お義母様と料理担当の牧さんの手を借りて、
最近、少しずつ上達して来た感じ。
だから毎朝6時前に母屋へ向かう。
朝稽古を終えた隼斗さんと入れ替わるように。
「おはようございます」
エプロン姿で挨拶をすると、
「おはよう、ゆのちゃん」
「おはようございます。若奥様」
お義母様と牧さんから挨拶が帰って来る。
テーブルの上には絹ごし豆腐と蛤、
大根と人参、木の芽が準備されている。
「今日は蛤のお吸い物ね?」
「はい」
お義母様に教わりながらお吸い物が完成。
牧さんが用意してくれた料理と共に
このお吸い物が配膳される。
「ゆのちゃん、隼斗を起こして来て?」
「はい」
私は離れへと向かった。