家元の寵愛≪壱≫


籍を入れて1カ月半。

仕事と学業とを理由にそれとなく逃げていた私。


けれど……たぶん……もう……。



優しく抱きしめられている腕に力が込められたのを感じて、

思わず身体がビクッと反応する。


まるで私が嫌がってるみたいに。

別に嫌なんかじゃない。

嫌じゃないんだけど…。

ただ、少し怖いだけ。



少しずつ強まる腕の拘束が合図のようで

ますます身体が硬直する。


………どうしよう。


すると、

隼斗さんがキスをしようと、唇を近づけて来た。



………怖い。


私は無意識に顔を逸らしてしまった。



すると―――――、

ギュッと抱きしめられ……



「好きだよ………ゆの」


耳元で甘美な声が。


「ゆの……ゆの……ゆの……」



何度も何度も甘い声で名前を呼ばれて

いつしか身体の硬直は、

隼斗さんの温もりで解けていた。


苦しいほどに抱きしめられ

思わず、身体を反らし始めると…



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