家元の寵愛≪壱≫


こうして私の1日は始まる。


まずは“家元夫人”としての務めをこなし、

今から“妻”として“夫”を起こしに。

そして“学生”として大学へ通い、

帰宅すると再び家元夫人の務めを。

目まぐるしい1日の終わりには…

最愛の人……隼斗さんの唯一の“女”に。


隼斗さんの妻である事ですら分不相応な気がするのに、

私は家元夫人の座と学生の身分と…

そして、1人の男に愛される“女”という、

この上ない贅沢な生活をしている。


何もかもが満たされ過ぎて怖いくらい。


ふぅ~私、また後ろ向きな考えを…。


大きく深呼吸して、

隼斗さんが眠る寝室の襖を開けた。



!!!!!

片脚が布団から投げ出され、私の視線を簡単に奪い去る。

ッ!!……もう!!!


寝てても誘惑するなんて……。


枕元に歩み寄り、隼斗さんに声を掛ける。


「隼斗さん……隼斗さん、ご飯ですよ!?」


そっと優しく肩を揺らす。


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