家元の寵愛≪壱≫


何の反応も無く、

眠り続ける隼斗さんの肩を

再び揺らそうと手を差し伸べた瞬間――――!!


「キャッ!!」


私の手を掴んで手繰り寄せた。


肌触りの良い羽毛布団にポスッと埋もれるように。

体勢を崩した私の身体をいとも簡単に包み込む腕。

少し息苦しいくらいに抱きしめられる。


「んッ!!はっ、隼斗さん!!ちょ、ちょっと~」

「あと少し……」

「だ……ダメですってば…」

「もうちょっと」


甘美な声で耳元で囁かれ、

“じゃあ、あと少しだけ”とついつい許してしまう私。



隼斗さんの腕の中にいると何故か落ち着く。

思わず目を瞑って全身で酔いしれていると


「ゆの、起こしに来たんじゃないのか?」

「え?」

「ゆのが寝てどうする」

「んッ!?もう!!隼斗さんのイジワル」


隼斗さんはちょっぴり不敵に微笑んで、

何故か……深呼吸をした。



と、次の瞬間!!


< 6 / 450 >

この作品をシェア

pagetop