家元の寵愛≪壱≫


ゆのの手を取り、

廊下で待機中の弟子と合流。


そして―――――。


春の行楽・ゴールデンウィーク。

ロンドンの市街地は観光客で賑わっている。


俺達はその賑わいの中心へ

凛とした和の装いで練歩く。

拍手の渦と歓呼の声。

俺らの周りには大勢の観光客。

ホテルから会場までの

たった150メートルの道のりは

華やかな笑顔の花道と化した。








「家元、お時間です」


静乃さんの合図で、

特設会場の茶室に緊張が走る。


簡易的な茶会イベントとは言え、

もてなす心は変わらない。

いつもと同じく極上の一服を。


俺は目を閉じ、心を無にして…。



すると、


「コンニチワ~」


背のスラリとした金髪の女性が笑顔で入室。

俺は笑顔でお客様をお迎えする。




俺は……ひと息吐いて……

極上の一服を点てる為、

そっと茶筅に手を……。


< 66 / 450 >

この作品をシェア

pagetop