家元の寵愛≪壱≫
ゆのの手を取り、
廊下で待機中の弟子と合流。
そして―――――。
春の行楽・ゴールデンウィーク。
ロンドンの市街地は観光客で賑わっている。
俺達はその賑わいの中心へ
凛とした和の装いで練歩く。
拍手の渦と歓呼の声。
俺らの周りには大勢の観光客。
ホテルから会場までの
たった150メートルの道のりは
華やかな笑顔の花道と化した。
「家元、お時間です」
静乃さんの合図で、
特設会場の茶室に緊張が走る。
簡易的な茶会イベントとは言え、
もてなす心は変わらない。
いつもと同じく極上の一服を。
俺は目を閉じ、心を無にして…。
すると、
「コンニチワ~」
背のスラリとした金髪の女性が笑顔で入室。
俺は笑顔でお客様をお迎えする。
俺は……ひと息吐いて……
極上の一服を点てる為、
そっと茶筅に手を……。