家元の寵愛≪壱≫
五 架空のセミナー合宿
6月下旬―――――
大学の学食でランチ中に…。
「玲、どうしよう」
「もしかして、まだ話してないの?」
「………うん」
「どうすんの?もう、1カ月しかないんだよ?」
「……うん」
「直前になって話したら、余計に怪しまれるよ?」
「うん……分かってるんだけど…」
「隼斗さんのお母さんには話したの?」
「それもまだ…」
「もう……アンタって子は…」
玲は呆れ顔でアイスティーを口にしている。
「とりあえず、今日明日にでも話しなよ?」
「……うん」
「もしかして、許可して貰えないとか考えてんの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど…立場的に我が儘言っていいのかなぁ…って」
「う~ん、そうだねぇ…」
玲と私は考え込み始める。
「ゆのが家元夫人なのは事実だけど、大学生でもあるんだし。ちゃんと説明すれば大丈夫だよ」
「……そうかなぁ?ウソのセミナーでも?」
「うっ…それは……ゆのの説明次第でしょ?!」
「……だから困ってんじゃん」
私が泣きそうな顔をした、その時!!