家元の寵愛≪壱≫


サラサラの隼斗さんの髪は

あっという間に乾いてしまい…。


「で、話は何だ?」

「えっ?!」

「俺に何か話があるんだろ?」


鏡越しに私を見つめる隼斗さん。

私の心も見透かしているようで…。


「あの、来月夏休みに入ったら、セミナー合宿があるんです」

「セミナー合宿?」

「はい。玲と同じ授業を取ってるのがあるんですが、その授業の課題で…」

「へぇ~」


隼斗さんは疑う様子も無く、ビールを口にした。


「で?」

「えっと……7月下旬から2週間ほどなんですが…」

「はっ?!今、2週間って言ったか?」

「……はい」


隼斗さんは私の言葉で固まった。

やっぱり、2週間は長すぎるよねぇ?

『セミナー合宿』が嘘だってバレるかなぁ?


鏡越しの隼斗さんの視線が痛い。

早まる鼓動で気が狂いそうだよ。


私は苦笑しながら…

居ても立ってもいられなくて、

本当の事を話そうとした


その瞬間―――――。

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