家元の寵愛≪壱≫
「分かった。大学の事なら仕方ないよな?ゆのは大学生なんだから」
優しい笑顔を浮かべる彼に、
私は心の奥がチクッと痛んだ。
妻になって初めてついた『嘘』
私は申し訳なさとやり切れない気持ちで…
「おっ、おいっ!!ゆの、どうした?!何で泣いてんだよ…」
「ご、ごめんなさい…」
涙を隠すように両手で覆うと、
ふわりと隼斗さんの腕に包まれた。
温かく心地いい彼の鼓動。
隼斗さんの胸に顔を埋め…
「何で泣いてんだよ。俺と離れるのが辛くてか?」
「……ん」
私は鼻声で頷く。
「俺もゆのと2週間も離れるのは正直辛い。けど、我慢しような?」
「……ん」
彼の優しさが痛いほど伝わる。
私のついた嘘を信じてくれ、
私の流す涙の訳をしつこく聞いたりしない。
そっと優しく包み込んでくれる。
私は罪悪感で中々涙を止める事が出来なかった。