家元の寵愛≪壱≫
六 初めての夫婦喧嘩?
8月中旬―――――
ゆのがセミナー合宿へ参加して早15日。
今日は待ちに待った帰宅の日。
俺は昨日から気もそぞろに…。
ゆのがいない2週間は地獄のようで、
潤いが無いと言うか、味気ないと言うか、
何をしていても張り合いが無くて。
ゆのは俺にとって
無くてはならない存在だと
俺は改めて実感した。
俺が俺である為に…。
俺はこの2週間、
気を紛らわせる為に仕事に没頭していた。
夏の茶道家は、
秋の茶会に向け準備に追われる。
特に真夏日の天気の良い日は
1日中炎天下の中で作業しなくてはならない。
普段、室内に籠る俺らにとって
この夏の作業は想像以上に過酷で、
毎日、意識朦朧としながら作業する。
まぁ、これが返ってゆののいない淋しさを
紛らわしてくれた事には変わりはないが…。