家元の寵愛≪壱≫
「久しぶりに会えるから嬉しいでしょ~?」
「うるせぇーよッ!!」
「幾ら恋女房でも、人前で押し倒すんじゃないわよ~?」
「するかッ!?んな事!!」
「どうだか~」
「あぁー母さんと話してるとイライラする。俺、もう行くから」
「フフフッ…気を付けてぇ~」
「チッ!!」
んだよッ!!
ニヤニヤしやがって!!
気持ち悪いにも程があるっつうの!
俺は愛車に乗り込み、自宅を後にした。
駅に着いたのは、約束時間の30分前。
ロータリーに車を停め、
ゆのが出て来るはずの改札口方面に視線を。
はぁ~早く来ないかなぁ…。
1分1秒でも早く会いたい。
どうせ、ゆのの事だから俺を待たせまいと
到着時間を少し遅めに伝えてるハズ。
だから俺は、裏を読んで…
30分も早く駅に迎えに来た。
ん~そろそろ姿を現してもいい時間なんだが。
改札口から出て来る人の中に―――――