家元の寵愛≪壱≫


話すだけならともかく、

ゆのに触れていいのは……俺だけだ!!


俺は居ても立っても居られず、

すぐさまゆののもとへ歩み寄ろうとすると、

ゆのが俺の車に気が付いた。


―――――当然だ!!

俺の愛車はそうそう走ってない車種だからな。

目立って当然。


ゆのは男から鞄を受取り、お辞儀をすると

男が挨拶で手を振った。

ゆのはそれに応えるように

満面の笑みで手を振り返した。



そして……

俺のもとへ可愛らしい笑顔で歩み寄る。



チクチクチクチクッ…

胸の奥が鋭く痛む。



「隼斗さん!!早かったんですね?」



ニコッと微笑むゆの。

『早かった』……?

俺が早くに来られたら困る事でも?


可愛い笑顔を見せるが、

それは何かを隠す仮面か?!


ゆのが半月ぶりに俺のもとへ帰って来たのに

手放しで喜べない俺がいる。


< 81 / 450 >

この作品をシェア

pagetop