家元の寵愛≪壱≫
話すだけならともかく、
ゆのに触れていいのは……俺だけだ!!
俺は居ても立っても居られず、
すぐさまゆののもとへ歩み寄ろうとすると、
ゆのが俺の車に気が付いた。
―――――当然だ!!
俺の愛車はそうそう走ってない車種だからな。
目立って当然。
ゆのは男から鞄を受取り、お辞儀をすると
男が挨拶で手を振った。
ゆのはそれに応えるように
満面の笑みで手を振り返した。
そして……
俺のもとへ可愛らしい笑顔で歩み寄る。
チクチクチクチクッ…
胸の奥が鋭く痛む。
「隼斗さん!!早かったんですね?」
ニコッと微笑むゆの。
『早かった』……?
俺が早くに来られたら困る事でも?
可愛い笑顔を見せるが、
それは何かを隠す仮面か?!
ゆのが半月ぶりに俺のもとへ帰って来たのに
手放しで喜べない俺がいる。