家元の寵愛≪壱≫
「隼斗さん?……どうしたんですか?」
「…ん?……んー何でもない」
俺は荷物を車に積み、作り笑顔で誤魔化した。
自宅へ向かう車内、時間にして数分。
夕方で混雑しているとは言え、
自宅まで大した距離ではない。
俺もゆのも何故か無言で。
恐らく、ゆのは運転の邪魔をしないように
相変わらず俺に気を遣っているようだが、
俺は心中穏やかではない。
さっきのは一体、何だったんだ?
アイツは誰だ?!
イライラしながら横目でチラッと見ると
ポシェットを大事そうに抱えている。
そう言えば、さっきアイツが
意味ありげにポシェットを指差してたな。
ポシェットがどうかしたのか?
これはゆのの入学祝に
俺がプレゼントしたブランド物。
―――――はっ!?
もしかして、さっきの奴から何か貰ったのか?
アイツからのプレゼントが入っているのか?